ナツドキ2020
メインビジュアルとロゴ解禁記念スペシャル対談

ナツドキは、好きなこと・やりたいことだけで作られる世界でありたい。
表現するうえで、「好き!」「やりたい!」という気持ちを純粋に出すことは難しい時もあります。それでもその衝動や想いを持ち、表現し続けることで、その表現に触れた人もまた、好きなこと・やりたいことを表現したくなったりする…そんな連鎖が続けばいいなと思っています。
その連鎖をまさに生み出す3人。
3年連続でナツドキに携わり、ナツドキ2020の顔となるメインビジュアルを担当する三上唯さん。そして、初の試みだった公募によって選ばれたロゴの制作者であるデザイナーのトヨダユウキさん。好きなこと・やりたいことをまっすぐ肯定し続ける、バンドマンでありナツドキ主催者の越野和馬。ナツドキをとおして出会った3人の、表現に対する想いを紐解きます。

(写真:東海林ひろ/文:原岡蓉子)

表現者たちの人物像

朝9時から始まった今回の対談。トヨダさんとは初対面でしたが、初対面とは思えない柔らかな空気感で始まりました。

ーまずは自己紹介をお願いします。

越野越野和馬です。AB型です(笑)
12月25日に生まれる予定だったのが、8日で、早く生まれて。タクシーの中で生まれたんですよ。

三上・トヨダへえーーー!

トヨダ仰天ニュースみたい(笑)

三上初耳です。

越野出身が名古屋で、上京してからバンドを始めました。
バンドで初企画をやることになって。2017年かな。それがナツドキの始まりです。
自分たちだけの力で企画やれるって全然思ってなくて。
周りの人の力を借りてやりたい。周りの人たちも同じフィールドに立てるような場所を作りたいなと思った。
で、最初の企画の時にデザイナーさんとかイラストレーターさんに協力してもらって展示やったり。実はその時にもうライブ配信やってるんですよ。カフェでライブビューイングもやって。

越野ナツドキやっていって、シンプルに、世の中にはいろんな作品があるんだなって。いろんな作品を見て、いろんな表現を見てるうちに、びびっとくるタイミングとかモチベーション、バックグラウンドが人によって違うってことに気づいたんです。だから表現に触れる機会とか、触れる物は多い方が良いと思った。
前まではナツドキは"サーキットフェス"っていう言い方をしてたけど、"お祭り"という形にした方が、お客さんのいろんなジャンルに対する捉え方がフラットになれるかなって。
…喋りすぎました(笑)
じゃあ次、三上さん!

三上
三上唯です。出生は新潟なんですけど、ずっと東京で育ちました。23区内なんですけど、のどかなところで今も暮らしています。

越野東京育ちってすごいですよねぇ。

トヨダそうですねぇ…。

三上たしかに、恵まれた環境だとは思います。
ちっちゃい頃から絵を描くのは好きで、でも学校に行けなかったりやめてしまったりしたので、美術をちゃんと学んだことはなくて全部独学で描いてきました。
だから最近まで学歴コンプレックスみたいなのがあったんですけど、いろんな人と出会って、作品を認めてもらった時に自分の描き方で良いんだって思えました。
ナツドキでもライブペイントやメインビジュアルを描かせてもらえてありがたかったです。

越野最初はライブペイントで出演してくださったんです。

トヨダへぇーー

越野次はメインビジュアルを。

三上やりたいです!って言って(笑)描くことになりました。

越野では、トヨダさんお願いします。

トヨダ今かよってかんじですが…名刺を渡します(笑)

越野・三上おぉーー

トヨダ豊田由生といいます。僕は、茨城出身で、去年の夏に転職で東京に来ました。
バンドもやっていて。(※SonoSheetのギタリストとしても活躍されています。)
高校の時に地元でバンドやってて。自分たちの企画の時にチケットとかフライヤーを作ろうってなった時に初めてデザインをかじったんです。進学のタイミングで、興味本位でデザイン系の学校に進みました。で、ラッキーなことに会社に入れて、今も、楽しいし、そのまま続けてきたかんじですね。

三上会社でデザインをやられてるんですか?

トヨダそうです。会社で勤めながら平日はやって、別の空いてる時間に個人的に仕事もやったり。ゆくゆくは一本に絞りたいです。そのための準備期間として今東京に来て色々学んでるかんじですね。

三上東京に来て意識が変わったりしましたか?

トヨダ茨城にいるとペースも違うし、お客さんの質も違う。あっちで5年間やるのとこっちで5年間やるのとでは、やることも量も違うし、スピード感も全然違う。こっちでまずは学んで…ってやるのが一番近道で地元に還元できるのかなぁって。遠回りかもしれないけど、結果的にはそれが近道になるかなと思ってやってます。

ナツドキ2020にまつわる
作品制作秘話

ー5月30日に開催するナツドキ2020。ナツドキは、好きなこと・やりたいことを肯定し、全力でやろうという想いが根底にあります。そんなコンセプトを視覚的に表現し、ナツドキを彩ってくれているメインビジュアルとロゴの制作にあたっての想いを聞きます。

越野今回初めて公募制を導入しました。
全然来ないかなと思ったんですけど実は…。意外といろんなところからたくさんの人が応募してくれて。トヨダさんの作品を選ばせていただきました。その節はありがとうございました!
トヨダさんが応募してくれたきっかけは何だったんですか?

トヨダ偶然Twitterのタイムラインに流れてきて。たぶんバンドのアカウントとか、間接的に繋がってたんだと思うんですけど。
「ロゴ」「公募」のワードにすぐ反応しました(笑)
去年からナツドキの存在は知っていたので、あ!これ!ロゴ公募するんだみたいな。俺もアイディア出たら出そうかなって考えてました。
頭の中でずっと考えてて、浮かんだイメージを夜デザインにおこして。これもしかしたらコンセプト付けていけるかもと思って応募しました。

※トヨダさん制作のナツドキ2020公式ロゴ。
“本来のお祭りへの「回帰」と「再定義」がテーマ。回帰の象徴として「祭」の文字を採用。「ナツドキ」というキーワードを組み込むことで、現代における「再定義」を表現しています。”というコメントを付けて応募してくださいました。

越野すごいよあれほんと。これだわ!と思った。

トヨダ嬉しいです!

越野ほんとに色々応募が来ていて。コンセプトを書いて送ってくださった人たちが結構いたんです。表現ってすごいなぁって思いました。
祭とナツドキを掛けたっていうのはすごい…。手振ったもんな。ロゴに(笑)

トヨダ・三上

越野三上さんはどう思いました?

三上すごい。ちゃんとしてるって(笑)
こんなにちゃんとしたものを作ってもらって…(笑)クオリティに驚きました。

越野祭っていう漢字は最初に使おうと思ったんですか?

トヨダそうですね。ナツドキのコンセプトも見て、キーワードとして祭があった。
昔から祭っていう漢字が既にアイコンになってると感じました。何かそこにプラスしてオリジナルになれば良いなって。
「ナツドキ」っていうカタカナも図形として見えてくる。漢字も図形で見ていて…あ、これバラして、組み上げたらできるかな。ナツドキ、(漢字の)祭の上の部分でいけるかもって。

三上それは頭の中で??

トヨダそうですね。バランス取りながら。バラしていく過程がお祭りを再定義するっていうコンセプトにも合うかなって。

越野へえーーー!すごい!文字が図形…

トヨダついそう見ちゃう。

越野たしかにそうかも。パズルみたいな感覚。

トヨダこのオリジナリティだったら表現できてるかなっていうのがちょっと見えたので応募しました。

越野僕の中の祭のイメージが、櫓がどーんって真ん中に立っていて、提灯が四方に広がっていくイメージ。そのイメージが祭って漢字にもトヨダさんのロゴにも表れてるなって。中心に立ってて広がっていくかんじにも見えてて。

トヨダ今の越野さんの、櫓の解釈も、僕の解釈も全部言葉にするとばーーーって長くなっちゃうけど、アイコンだけで全部語れるところが面白さですね。

越野すごい。制作期間はどれくらいなんですか?

トヨダトータルで1週間くらいですかね。会社から帰ってきて夜やって。
僕のキーカラーも黄色にしてて、ナツドキのキーカラーも黄色だったので、なんかやりやすかったです。

三上ロゴの黄色が、暖かみのある黄色だなぁって思って。あの色を選んだ理由は何ですか?

トヨダ主観になっちゃうんですけど、もうちょっと柔らかい、丸みとか、ロゴのテイストに自然と合わせたかんじかな。あとは、ビビッドすぎるといろんな媒体に後で落とし込んだ時に見にくくなっちゃうかなと。

越野続いて。三上さんのメインビジュアルに込めた想いとかこだわりを聞かせてください。

※三上さん制作のナツドキ2020メインビジュアル。

三上そうですね。こっしーさんとよこよこさん(※ナツドキコーディネーターであり今回の対談筆者の原岡です)のこうしたいっていうのがあったので、それを再現したかんじですかね。

トヨダそこの認識がちゃんと合って、同じビジュアルを作れるっていうのが良いですよね。

越野ロゴが入って一層うまく調和していて良いなぁと。

三上でもすごく悩みました。(ロゴを)読みやすくするにはどうするんだろう…みたいな。

越野こだわったところは?

三上テレビの中の、架空のバンドを描くのが楽しかったです。

越野オマージュいるんですか?

三上メインボーカルの男の子は、私の高校の時の先輩で軽音部の人がモデルで、ギターはボールプールの夏目さんのギターがモデルです(笑)

トヨダモチーフにする距離が良いですねぇ。

越野良い距離感!

三上弦を描き忘れてて。12月31日(解禁の数日前)に、ギターの弦を描いてないことに気づいて、ROCKAHOLICのテーブルで急いで描いてよこよこさんに送りました(笑)

越野…っていうドタバタ劇がありました(笑)
トヨダさんの、メインビジュアルの好きなポイントは何ですか?

トヨダ色が好きですね!(力強く)
もちろんビジュアル自体もかわいくて好きなんですが。去年のビジュアルも見ていて。去年の、夏の日差しの強いかんじ、ちょっと切なくなるかんじがすごいあって良いなって。そのトーンも知ってるからこそ、あの色にすごい惹かれました。

三上嬉しい…!

トヨダナツドキらしさ、多様なかんじがあって良いなって。

ものづくりの背景

ーモノを作り続けている、表現し続けている3人。"作品を作る"ということに対しての想い、根底にあるそれぞれの想いを聞きます。

越野トヨダさんはこういうの作ってみようって思いつくよりは、受注されて作るっていうことが多いですか?

トヨダそうですね。そういうことが多いです。でも勝手に自分で思い浮かんで作る時もあるんですけど。

越野三上さんの描くスピードがすごいんですよ。

トヨダえぇーーめちゃめちゃ大事ですね。

越野イラストを出すスピードがえげつない!一日でマックスで、出した時ってどれくらいなんですか?

三上4〜5枚くらい…ですかね。

越野・トヨダすごい!

越野三上さんは何もないところからパッと出てくることが多いですか?

三上ジャズのセッションみたいに、即興でやるってイメージを持たれがちだけど、資料を集めたりモチーフを決定したり…結構細かいところから最近は詰めています。

越野作品を作ろうっていう動機はどこから出てくるんですか?

三上最近は、作品を作るうえで私の核って何だろう?って思って。
寂しい絵が多いんです。孤独がキーワードなのかな、一番自分が恐れているのが孤独だと思う。
そこの恐れから解放するっていう部分を描いてるのかなと自分の中で思っています。

トヨダ僕もイラストも描くんですけど。作品っていうか、お客さんありきの制作になる。自分がこういうものが描きたいっていうよりか、誰にどうしたいのかを聞いて、それに合ったデザインを作る。
でも今回は公募っていうのもあったし、好きなことを表現として一個出せたなって思いました。

越野なるほどなぁ。三上さんは自己表現みたいなかたち?

三上うーん…どうなんでしょう。何を自分が考えてるかよく分からない(笑)

越野だから作品を作るっていうのはありますよね?

三上そうかもしれない。逆にこっしーさんは何考えて作ってるんですか?

越野三上さんに近いかも!“解放”みたいなところはあるかもしれないです。
僕の中で旅をすることが、すごく大事な行為で…。何て言うんだろうなぁ……。
旅をする時の孤独感というか。
僕もやっぱり孤独にはなりたくない。死ぬ時に悲しまない人が一人もいないのはやっぱり寂しいなと思って。人は誰かと接するために生きていると僕は思ってて。

トヨダ・三上うんうん。

越野でも旅をして知らない街に行くと、知ってる人も環境も空気も、何も知らないから。圧倒的に孤独なんです。
その孤独の中で生まれるコミュニケーションとか、接する世界が、孤独を埋める何かを生んでいて。その"何か"が僕にとっては幸福。
お祭り、ナツドキも結局、僕の中では一緒だなぁって。トヨダさんのこともそうだし、知らないものを知った瞬間が旅のかんじに似ている。作品を作るうえで旅をしている時の孤独から、"何か"を見つけて満たされていく感覚を作りたいなっていうのがあるんです。
自分の知らないこの音とこの音を合わせるとこんな響きが鳴るんだとか。
宇宙だったらどういう音楽鳴るのかなとか、考えながら作る。それが楽しい!

トヨダ思ったことを曲で、言葉で表現できるっていうのがすごいですよね。
イラストになると僕は逆に言葉にうまくできないから描く。たぶん。
それに込めた意味は結局誰にも話せないから、自分だけしか分かってないけど。
どうしようどうしよう!ってなってる気持ちを、その時に接してた何かのイラストを描いて自己完結する。やることは違ってるけど似てるかもしれません。

越野似てますよね。(胸の)中にある何かを伝えたいんだよなぁ。言いたいこと、伝えたいこと、知ってほしいこととか。

トヨダ人にも言えないけど、つっかえている部分を話せない、言葉にできないってなった時にイラストを描いてる。勝手に描くときはそういう時ですね。

越野イラストで作品として出していこうっていう想いはあるんですか?

トヨダやってみたいですけど、まだやったことないです。イラストの表現もまだ狭いですし。一個ステップが上がるとまだ足りないってなる。もうちょっと、もうちょっとっていうところですね。

越野今聞いてるとデザイナーとイラストレーターって全然違う領域の話なんだなって。ロジカルなかんじですよね。

トヨダそうですね。知った時はショックでした(笑)

表現し続けるということ=好きなことを続けること

ーものづくりの根底には、"好き"という想いはもちろん、心の中にある"何か"を伝えたいという衝動があるように思います。最後に、3人の、デザインや絵や音楽といった領域のどんなところが好きなのか、これからどんな表現をしていきたいかについて聞きます。

越野デザインのどんなところが好きですか?

トヨダ僕は、情報量を詰め込めるっていう(笑)ロゴ一個に全部詰め込んだうえで語れる、容量がすごいあるっていう表現のしかたが好きですね。

越野美しい!美しいですね。
僕最近ボードゲームにハマってて…ナツドキでもボードゲーム作ろうとしてるんですけど。ボードゲームも結構ロジカルに自分の中の道筋を考えて作ってゴールするかんじがちょっとデザインっぽいなって。音楽もそういうところありますよね。

トヨダうんうん。

越野音楽の好きなところは、自由になれるところ。それこそ、旅できるなって思うんですよ。
結構いろんな音楽聴くんですけど、その音楽聴いてる時はその世界にトリップできちゃう。
音楽以外の作品に対してもそう思うかもしれないです。
音楽はイマジネーションの幅が広いなって感じるけど、展示とかで絵を見ても、そこで鳴る音を感じたりする。活字も同じで。
想像の幅が広い。だからしんどい時もあるけど想像する楽しさがあるなって。その作品の、奥行きの部分、自分(受け手)が汲み取って想像する部分、そこが好きです。楽しい!

越野三上さんは?どうですか?

三上うーん…。なんかいっぱいあって分かんない(笑)

越野これからどんな作品を作っていきたいとかありますか?

三上受け売りなんですけど、人のために作品を作りたいっていう人がいて。それ良いなって思って。これからもっと、生きづらさを感じる人とか、私の絵を必要としてる人に届けたいなっていう想いがあります。

越野それってデザインの考え方みたいなかんじですね。

トヨダそうですね。

三上トヨダさんは?

トヨダ今以上にもっと生活の中に入って、もっとわかりやすく、役に立つデザインを作りたいです。もっと深い広い意味でのデザインをしたい。紙の中で完結するものではなくて、使われるまでの設計をしたいんですよね。

三上工業デザインみたいな?

トヨダそれに近いですね。グラフィックだけではなくて、そういう領域がやれるようになりたい。

越野・三上へぇーーー!

三上こっしーさんは?

越野旅ができる音楽がしたい!

トヨダ旅をし続けるってことですね。

三上良いですね。

越野以上です(笑)ありがとうございました!

一同ありがとうございました!

領域は違えど、表現を生業とする3人の言葉の端々には、"好き"という気持ちや、誰かや何かに対する想いを形にして"伝えたい"という強い衝動が溢れていました。そして、3人共にこれから(未来)への想い、作品を作り続けることに対する想いがとても強いということに、無限大のエネルギーを感じます。
伝える時にたとえ制約が発生したとしても、その中で思考錯誤をし、向き合って、ある答えを見つける。それが表現となる。そういう表現を感じ取った時に、人はさらに自分も表現したいという想いに駆られるのではないでしょうか。
ナツドキは、好きなこと・やりたいことだけで作られる世界であり、それは表現の世界です。
好きなことをやり続けることはとても難しいし、やんややんや言う人も中にはいるかもしれません。それでも、そんな誰かのネガティブな言葉を跳ね返せるくらいの力を表現はもっていると信じているし、誰もが表現者であると信じています。
ナツドキはそんな表現者たちの集まる場であり、好き!やってみたい!という想いと力に溢れた場でいつまでもありたいです。
ナツドキ2020も新しいことにどんどん挑戦し、去年より益々パワーアップしています。5月30日、楽しみにしていてください。