#1 ナツドキ2020中止決断にあたっての想い

2020.04.29

-はじめに-

こんにちは。こんばんは。ナツドキスタッフの原岡蓉子です。
好きなことや、やりたいことをやっている人たちにフォーカスし、かれらの想いやこだわりについて聞いたことを記事にし、これから定期的に発信していこうと思います。
人を通して、ナツドキのコンセプトを伝えたいと思っています。
まずは、主催者越野和馬にフォーカスを当てます。

聞き手のProfile

原岡蓉子/2017年、バンドメンバーと共にナツドキを企画。以後、スタッフとしてナツドキに携わる。基本的に運営に関わることはなんでもやる。Agniのマネージャーでもあり、社会学者でもあります。

【中止に至った経緯について】

本日、5月30日(土)に開催予定だった、ナツドキ2020の中止を発表しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響による判断です。4年目を迎えて、協力してくださる人の数も、会場の数も出演者の数も過去最多ということもあり、気合い十分だったなか、中止の決断をせざるを得なかったことは私(原岡)もとても悔しいものでした。

-まず、決断に至るまでの経緯について教えてください。

越野:

もともとナツドキ2020に関しては、2019年の10月から計画を始めました。
年末には計画を立て切って、ライブハウスを押さえた状態で準備をしていたよね。
今回7会場だったから、出演者も約60組くらいのアーティストさんが決まって、告知とかも始めていた時点で、3月頭くらいからコロナウイルスの話が結構出始めて。 僕自身がライブハウスで働いているので…ライブハウスのイベント自体もなくなり始めて。
東京都からの自粛依頼の申請も来て、3月末くらいからライブハウスのイベントもキャンセルが続いて4月上旬には、半分以上のライブができなくなった状態。
で、ナツドキの中の人たち、コアメンバーたちとどうしましょう(ナツドキを中止にするかしないか)っていう話をしていました。
最初は僕が決断を全部しようかなと思ったんだけど、
今回ナツドキのオープンチャットとかもあって、かなり多くの人が制作にずっと関わってきたので、僕の一存じゃなくて皆さんの意見を聞いて、やるべきかやらないべきかっていう判断をしたいなと思って、オープンチャットで今回の状況をどう思いますか、どうすれば良いと思いますかっていう風に意見交換をしました。
結果的に9割9分の人が中止をすべきだっていう判断になって、今回の中止に至りました。

-中止の決断後に、ただ中止にするだけでは終わらず、代替案を考え始めましたね。

越野:

アナログの、「お祭り」としては中止をしますってことにしたんだけど、
「やりたいこと、好きなことが価値となる場所」っていうのがナツドキのコンセプト。明らかに、こういう状況下で、やりたいことはあるのに、やれなくなっている環境があって。ナツドキにいる人たちはクリエイターの人が中心だけど、あんまり活動できずに悶々としている状態は、ナツドキのコンセプトにも明らかに反するものだと思ったんだよね。
だからそんな状況にある時こそ、ナツドキとしてコンセプトを踏襲したことを発信したり、行動をすべきだと思った。ただ僕のアイディア不足で…皆さんの知恵を借りて、オープンチャットで意見交換したり、出演予定だった出演者に本当に率直な相談をさせていただいた。あとは僕自身がツイキャスをやって、ナツドキどうしたら良いだろうね〜みたいな話をして意見交換をして。
今、意見交換で集約したアイディアをもとに行動をしていく次第です。

【五感で感じることの尊さ】

正直なところ、私は当初、現在の状況にとても狼狽していました。テレビの画面を見ているような感覚に陥ったのです。ナツドキを運営する立場としても、たくさんのことを考えたものの、心配や不安がどの思いより勝っていました。こういう時の自身の感情をなかなか表現することが難しく、つい人が何を思うか気になってしまい、酷く不器用な質問を投げかけてしまいました。

-この状況の中で何を考えていましたか…?

越野:

コロナ云々じゃなくて思っていたことは…
家の中のコンテンツ、要は画面上で感じられることと、現実で感じられることはやっぱり違うじゃない?だけど、それを分からないままでいられることは、ありえるなと思うわけ。それでも満足できるんだとは思う。
でも。例えば、インドのガンジス川の動画を見て、「ガンジス川きたねー」って、「死体浮いてるんだ」って言うことはできるし、やばいんだなって思うことはできるけど、
実際行ってみて感じた、感覚、死についてとか、その人たちの生活についてとかは、現実は(動画で見ていたものと)明らかに乖離があるじゃん。そこに行ってなくてもそれを感じることはできるし、それを100だと思うことはできるけど、僕はそうじゃないと思う。
やっぱりリアルに行くことは大事だし、そっちの方がより楽しくなれるし、感性を養っていけるなって思うから。そこの場所に実際に行って、感じた方が、その作品に対して純度100で受け取れる。
…と思っているんだけど、一方で、そうじゃなくても(実際に足を運ばなくても)感じられることは事実であって。でもそれで満足してる世界から抜け出して欲しいっていう僕の想いがある。
外の方が楽しいよ!ってことが言いたいっていうか。そう思ってずっとナツドキをやってたし、ライブハウスとかバンドマンって、そういう気持ちが大きいなって実感してる。
だけど、その層っていうか、その人口がどんどん変動してきてるなっていう風には思う。ここにきて、やっぱそうだよなっていうのは正直ある。リアルじゃなくてもその場所に行かなくても、家でも楽しめるよね、みたいな。明らかに楽しみ方が違うけどね。受け取り方、どの感覚を使っているかっていう感覚値、パーセンテージも違ってると思うけど、家でもたしかに楽しめるよねとは思う。
それでもリアルに来てほしい、ちゃんと足を運んで楽しんでほしいっていう想いは常にある。どちらにせよ、コロナの一件で、変わらなきゃいけないよな、考え直さなきゃいけないよなっていう気づきはある。

このような状況になって余計に、実際に行って、見て、感じることがいかに尊いか感じる日々です。私も五感を存分に使って現実に触れたい、そうすることの大切さを信じているのだと痛感しました。

【今年のナツドキの試み】

実際に足を運ぶ、誰かと会う、見て、話して、聞いて感じる…五感を思う存分働かせられる日が来ることを心待ちにしながら、私たちが今できることをやっていきたい。

-最後に、今年のナツドキの取り組みを具体的に教えてください。

越野:

ナツドキ2020は「90年代のてれびの世界が飛び出してきた」がテーマ。
そのテーマでずっと準備してきて、今回のメインコンテンツは、テレビ番組を作ること、タマリバっていう総合会場、THE・お祭り会場を作ること、街歩きのコンテンツとして謎解きを入れること、オリジナルボードゲームを作成して、みんなで楽しみましょうっていうコンテンツを作りました。ただ、ほとんどがアナログのコンテンツで、その理由は「リアルでこそ」と思ってるから。
なので、これらのコンテンツは、作るは作るけど、どうやって発信するかは検討中です。
デジタルにできることもあるんじゃないかとも思ってるので、それをパッケージングした、メディアとしてのナツドキを出していけたらなと思っています。
ナツドキのコンセプトが、「好きなこと、やりたいことが価値となる空間」なので、メディアでも、好きなこと、やりたいことをやってる人たちの作品を載せたり、その人たちにスポットを当てて、その人たちを紹介したり、っていうメディアとしての役割をして、その人たちの価値を提供していきたいな、みんなでその価値を受け取ってそこでまたコラボとかできれば良いなと思ってます。
ナツドキ2020自体は中止なんだけど、その中でも、例えば謎解きとかボードゲームとか。
外出自粛が解禁したらアナログでできることも、進めていけることもあるので、みんなが外に出ることが楽しみになるようなコンテンツを常に発信していくことは、僕らの使命でもあるなと思ってます。

第1回はナツドキ2020中止にあたって、その経緯と、主催者越野和馬の想いを聞きました。
悔しい気持ちはあるけれど、変わらずナツドキらしいことを発信し続けたい。そして、たくさんの人にその発信を見てもらいたい。そんな想いがより一層強くなりました。