#2 ナツドキのはじまりと根本

2020.05.01

【そもそものナツドキの始まりについて】

今年ナツドキは、4年目を迎えました。最初の年は、今以上に手作り感満載でしたが、当初からクリエイティブな方々に囲まれてひとつひとつ積み重ねていけたように思います。改めて、ナツドキの始まりやコンセプトについて聞きます。

-ナツドキが始まった経緯について改めて教えてください。

越野:

そもそもナツドキの始まりは、3年前かな…?(2017年)5年前に上京してから、組んだバンドがあって、そのバンドの企画をやりましょうってなって。バンド活動していくなかで、もちろんバンド仲間、ライブハウスで一緒にイベントを作っている人たちとかももちろんなんだけど、それ以外にもいろんな人がバンド活動には関わってくる。
バンド活動をとおして、いろんなクリエイターさんたちと会って、そういう人たちも僕らと同じように、その業界で活動しているなって思ったし、その一人一人にすごくこう…リスペクトというか、そういう考え方あるんだとか、そういう表現のしかたあるんだっていうふうに僕は感動したわけですね。

-音楽だけじゃなくて、クリエイターさんたちとも一緒にやろうって思ったのがナツドキをやるきっかけだね。

越野:

そう。いろんなクリエイターさんがいるし、僕自身が音楽をやっていて、音楽以外のクリエイターさんの表現に感化されて。「あ、こういうやりかたもあるんだ」って思って、感性が磨かれていろんなことをやってみようって思ったし、それを掛け合わせるってこともやってみたいって思った。すごく考えが自由になったんだよね。
好きなことやってて良いんだって思ったから、そういう人が一人でも増えれば良いなって思って、お祭りみたいな、クリエイターさんがいろんな出店をするっていうお祭りにすれば、お客さんが「初めて」に触れて、「あ、こういうのあるんだ」っていうふうに驚く…僕と同じような体験ができるんじゃないかと思って始めたのがナツドキです。

【ナツドキの軸】

こうして始まったナツドキのコンセプトは、「好きなこと、やりたいことが価値となる場所」。根底にある願いとして、音楽、写真、絵、演劇…といった表現の「ボーダー」をできるだけ取り払って、全員が主役級に輝けるようにしたいというのがあります。ただ、それはイベント事をやるうえで、もちろんなかなか難しいことでもあります。特にこの願いが私は強いのかもしれません。

-みんな主役というのはなかなか難しいことだなと感じてるんだけど、どう思いますか?

越野:

軸はやっぱり音楽。一番根っこにあるのは音楽だから、「サーキットフェス」としての軸からは逃れ切れないっていうのはある。それがあるから、会場とかも基本的にはライブハウスだし。 今年はそういうのなくしていく方策を取ろうと思って、タマリバ(※総合受付会場)を作ったり、ナツドキてれびで、タイムテーブルというか、番組表をうまくパッケージングすることで、クリエイターの表現の違いをひとつのものとしてパッケージングできるように試行錯誤はしたりはしてる。だけど、軸には音楽、サーキットとしての軸があるから、そこは難しいところではあるよね。
逆に音楽の会場だからできる、クリエイターさんたちの表現とかを僕らがテストしながら見つけていきたいなとは思っていて、大間知さんとやってる音劇演楽場(ミュージャム)とか、三上さんとやろうとしてたアニメーションと音楽のコラボだったり…。軸は音楽にあるから、うまくそこをデザインしないといけないなとは思ってる。 ただ、ナツドキのコアメンバーは、バンドマンだけじゃなくて、音楽以外のいろんな人が入ってる。そういう意味合いでは一緒に作ってるかんじ、ノンジャンルで作ってるかんじはあるかなと個人的には思ってる。

音楽から始まっているナツドキ、そこにいろんな表現を生業としている人が集まり、ナツドキを創り、どんどん新しい作品を生み出していく…。軸があることは決して、上や下を決めているわけではない。そうだそうだと、腑に落ちて、軸をもちながらジャンルの垣根をいかになくすかという課題は常に頭に入れておこうと改めて誓います。

【好きなことをやるということ】

繰り返しになりますが、ナツドキのコンセプトは、「好きなこと、やりたいことが価値となる場所」。私自身も今、好きなこと・やりたいことを生業とするべく日々生きていますが、一方でその茨の道に散々怖気付いた過去の自分がいます。だから、好きなことをやることに対して、楽しさ半分・恐怖半分というのが正直なところで、人が何を考えて好きなこと、やりたいことをやると決めているのだろう、その人にとって好きなことをやるとはどういうことなんだろう、ということを切実に知りたいと感じてしまいます。

-こっしーにとって、好きなことをやるってどういうことなんだろう?

越野:

どういうことだろうね。どういうことなんだろう…。楽しいよね、とは思うんだよ。

-好きなことをやる大変さも楽しんでるってことだよね。

越野:

そうだね、どのタイミングとか、どの職業とか、どの行為にも、続けると必ずしんどくなることは出てくるとは思う。…とは思うし、好きなことをやることがえらいことだとは思っていない。むしろすごくシンプルなことだと思うんだけど。だから別に誰がすごいとかではないと思うけど、絶対しんどくなる時期が出てきて、その時期をどうしようと思うかっていうか、それも含めて続けてることってあるじゃん。
バンドマンも、やっぱりノルマ払って、ライブして、誰にも褒められずにブッカーに怒られて。お金払ってるのにって怒る人もいるけどさ、なんかそれも怒って当たり前だと思うんだよね。でもそれでもやるのは、きっと好きだからじゃん?俺はそうだから、だったらちゃんと、もっと好きなものを大事にしたいなって思った。
たしかに、他のものは切り捨ててるわけじゃん。それだけ好きなことを続けようって決めたから、今の状況とかも不安なことも出てくるし、周りには説明しなきゃいけないことも出てくるから、そういう大変さはある。周りは知らないから。
だから自分がちゃんと仕事を作らないと、何もできていかないし、辛いというか、そういう「責任」は出てくるよね。

まっすぐに「好き」という気持ちに向き合い続けることはとてもシンプルで潔い。
ナツドキに携わってくれる人は、そんな「好き」に向き合い続けている人ばかりです。きっとみんな不安や恐怖はひしひしと感じながらも「好き」を大事にしているのだろう。そう思うと益々、ナツドキが好きなこと、やりたいことが価値として集まる場にし続けたいと感じます。

【今までのナツドキを振り返って】

-最後に、ナツドキをやっててよかったことはありますか?

越野:

いっぱいあるけど…一つは友達ができたこと(笑) シンプルに。 あとは、自分と違う、違かったであろう人たちと一緒に作品を作れていること。ナツドキっていうね、作品を作れていること。

-最初の2回は出演もしていて、去年は出演せず完全に責任者の立場で、目線が違ったと思うんだけど。どうでしたか?

越野:

大変だけど楽しいし、一緒に楽しんでる実感がある時が一番嬉しいのかも。
例えば、一昨年終わって、音楽食堂で片付けしながら、みんなで話してて…さとこちゃんとか三上さんとかと色々話したり、さきちゃんが三上さんの絵欲しいとか言ってたり、来年はこうしましょうみたいな話をしてた、ああいう時はやっぱり嬉しいよね。
それは出演者としてもそうだし、作り手としてもやっぱり嬉しい。
あと去年の、全体打ち上げ。死ぬほど人が集まった。11時くらいに出演したバンドとかもきてくれて、挨拶できたことはよかった、嬉しいなーって思う!

今回は、ナツドキが始まった経緯や軸と、私が感じていた、ナツドキのコンセプトに関わる好きなことをやることに対する難しさについて聞きました。上記でナツドキを振り返って、私自身も出演者の皆さんとの打ち上げや、開場前の装飾を必死にやっている瞬間や、ふとした時のスタッフどうしの会話が耳に入ってくる瞬間が「作っている…!」という実感があって大好きです。こういう身にしみて感じる「好きだ!」という感覚を大事にしたいと強く思いました。

聞き手のProfile

原岡蓉子/2017年、バンドメンバーと共にナツドキを企画。以後、スタッフとしてナツドキに携わる。基本的に運営に関わることはなんでもやる。Agniのマネージャーでもあり、社会学者でもあります。