#4 大間知賢哉×越野和馬対談 ー音劇演楽場のはじまりー

2020.06.04

「音劇演楽場」(読み:ミュージャム)は、今年の2月18日に下北沢ReGで開催された企画です。4組の弾き語りのアーティストのライブに加え、4人の役者による演劇が繰り広げられました。脚本は、各アーティストの楽曲に着想を得て書かれた完全オリジナル作品。着席スタイルで全4作品・計2時間を楽しむ特別な一夜となりました。 その企画者である、役者・大間知賢哉さんと、ナツドキ主催者であり、バンド・Agniのフロントマンである越野和馬に、ミュージャムについて話していただきました。対談の模様を数回に分けて書いていきます。

Focus on Kenya Omachi, and Kazuma Koshino

-まず、ミュージャム開催の経緯について教えてください。

越野:

あんまり覚えてないな(笑)


大間知:

この対談が振り返る機会になったっていうのがすごい良かった。僕も忘れかけてて(笑)
たぶん、出会いは2018年のナツドキですよね?


越野:

そうそう。


大間知:

その時は、おんがく食堂(下北沢モナレコードの下のカフェ)で僕は二人芝居をやらせてもらったんですけど…それがスタートで。
その時はこっしーさん、僕のパフォーマンス見れてないんじゃないかなと思って。



越野:

そうですね、見てない!


大間知:

そうですよね
それから先、去年の春にドラゴンポートレート*…ナツドキのサブイベントがあって。
(*2019年4月に下北沢ReGにて2日間開催したイベント)


越野:

2daysのやつですよね。


大間知:

そうそうそう、ライブの合間に、幕間で芝居をさせてもらったじゃないですか。あれが、ある意味で、こっしーさんにちゃんと見てもらった時かなと思ってて。


越野:

そうですね、「ええじゃないか」*の前ですもんね!
(*2019年のGWに学芸大学MAPLEHOUSEで開催した6日間連続イベント)


大間知:

そう、ええじゃないかが5月なので。
萩原朔太郎の猫町をライブの間に挟んでやるってかんじだったんですけど。
まずそれを見ていただいて、5月の「ええじゃないか」につながっていって…
「ええじゃないか」もタイムテーブル的に、こっしーさんたぶんすぐ、次の反対側の会場で弾き語りやるってタイミングだったから、これもあんまり見れてない(笑)


越野:

アタマ3分くらいしか見れなかった(笑)


大間知:

こんなかんじで、2019年は結構立て続けにライブハウスでパフォーマンスさせていただく機会が増えたっていうのが、まずスタートとしてありましたね。
その中でライブハウスでやっていくっていう感覚を蓄えつつ、挑戦していって。で、大きなポイントになったのは、9月のトラベリングのレコ発のやつで。阿部さくらさんと一緒にやったダンスアクトパフォーマンスを、こっしーさんにたぶんがっつり見てもらったかなと思ったんですけど。


越野:

うんうん。あれ最高だった!


大間知:

あれは結構、踏み込む大きなきっかけになったんじゃないかなっていう気がしますね。
あれを見ていただいた直後のこっしーさんの感触が、なんかこう、「これいけるんじゃね」っていうか、ビジョンとかイメージを持たれたんじゃないかなっていう印象だったな、振り返ると。


越野:

うんうんうん、そうですね。


大間知:

流れ的に9月が、1つのアクセルになったんじゃないかなって気がしますが、どうですか、こっしーさん?


越野:

ほんとそのとおりで。ナツドキ2018の時って、最初は、ナツドキの運営側としての、街の活性化みたいなプロジェクトをやっている人、っていうイメージで。タイヤの。


大間知:

街を巻き込む企画っていう。*
(*ナツドキ2018では街を巻き込む企画として、大間知さんが関わっていたアートコレクティブ「東京文化創造都市計画」の方にご協力いただきタイヤを街中で引くというプロジェクトを行いました。)


越野:

役者っていうことは知ってたけど、その印象が強くて。
大間知さん個人というよりかは、チームとしてナツドキに関わってもらっていて、それの代表者というイメージで大間知さんとお付き合いしてたかんじがありました。
でもそもそも僕は役者さんに対してすごく憧れがあったから…役者としての大間知さんは見てないけど、「役者・大間知賢哉」って存在がすごい、役者って名乗れることがすごいよなって単純に思った。


大間知:(笑)


越野:

これはね、バンドマンも同じだと思うから、どこまでの人が名乗って良いっていうか…。
資格とかがあるわけじゃないから、誰でも名乗れるは名乗れるんだけど、名乗るっていうのは、自分の中で一歩踏み込むっていうか、決断があるじゃん。
だから役者として決断をしているっていうことに尊敬があって、憧れが強いです。
だから(大間知さんの演劇も)見たいなって思ってたけど、タイミングがなかなか合わずで…。2018年、おんがく食堂の時も、実は見てたんですよ!


大間知:

えー!そうなんですか!


越野:

そう、見てたけど、フルで見てたわけじゃなくて、3分〜5分とか。で、呼ばれてすぐどっか行かなきゃいけなくなっちゃって。
演劇は(場の)空気感が変わるから、すごい良いなって思ってて。
もともと演劇も好きだったし、音楽の人間として、音楽業界の人間として、音楽と演劇で何か一緒にできるんじゃないかと思って、結構ずっと話しましたよね。


大間知:

うん。


越野:

9月の阿部さくらさんとのパフォーマンスはたしかに、ほんとに手応えを感じたというか、「あ、これだな」と実感した部分がありました。
僕がずっと引っかかっていたところが…役者さんは劇場でやるのがやっぱり一番、フルパフォーマンスができるっていうか。一番良い環境、一番の良い舞台っていうのは、設備とかも含めて、劇場であって…ライブハウスでも全然できるし、良いパフォーマンスはできるんだろうけど、メインのステージっていうのは基本的には劇場だと思ってて。
一方で、ライブハウスのメインの人たちは、基本的にはバンドだっていう認識がやっぱりある。それを「違うんだよ」って言ったとしても、お客さんにも僕たちにも刷り込まれている。それは事実だと思ってるんです。ただ、僕は、そういう出し方はしたくないなと思ってはいるけど。
ライブハウスとして、音楽業界として、他のアーティストさんとコラボして、何かひとつ作品を生む時に、その軸は音楽にある。音楽を基準として、演劇、役者さんとどうコラボするかっていう。まず前提は音楽にあるんです。
その前提をちゃんと押さえたうえで演劇を見せないと、ライブハウスに音楽を見にきているお客さんに対して、100 演劇の良さを伝えきれないなって思っている。
イタリアンのレストランに行って、急に寿司が出てきたらビビるみたいな(笑)
今すごく平たく言っちゃったけど…(笑)そんなふうに思っていて、それが9月のときに、その前提を押さえてから演劇を見せられたっていうか。お客さんもそれを感じ取ってくれている実感もあったし、空気感も良かった。サブコンテンツじゃなくて、本編として演劇を見ているっていう実感があったから、これだと思ったんですよね。


大間知:

なるほどなるほどなるほど。話したり、聞いたりしているうちに色々蘇ってきますね。
あの、ええじゃないかの時は結構攻めたんですよ。作品の内容としても、パフォーマンスとしてもね。


越野:

うんうんうん。



大間知:

振り返ると、5月のときはある意味で、さっきのイタリアレストランに寿司持っていくみたいな受け取られ方をしたかもしれないなぁ。
9月のときは、やっぱり、何よりもトラベリングのレコ発…彼らのイベントって意味合いもあったし、そういう視点にも立ってたっていうか。
整え方っていうか、パフォーマンスの見せ方や構成のさじ加減みたいなところを結構意識したかもしれない。音楽に感度を持ってる人たちにどう入っていけるのかみたいな…トライしたら感触も良かったって感じですね。


越野:

それはすごい僕も感じて、すごい良かった。


大間知:

そう。その、「いけんじゃないか」っていう感覚が、ミュージャム発案のきっかけってかんじですかね。当初12月開催をめざしてやってたんですけど、ちょっとばたばたして流れてしまって、年明けて2月にやるっていう経緯でしたね。


「いける気がする」という共通認識が生まれた2019年9月。ミュージャムはそこから始まりました。次回は、ミュージャムが出来上がるまでのプロセスや当日のことについて聞きます。

聞き手のProfile

原岡蓉子/2017年、バンドメンバーと共にナツドキを企画。以後、スタッフとしてナツドキに携わる。基本的に運営に関わることはなんでもやる。Agniのマネージャーでもあり、社会学者でもあります。